「ねぇ、唯人は今、幸せ?」
「あぁ、とっても」
唯人は言葉通り、本当に幸せそうな笑顔で答えた。
「リリは今、幸せ?」
キーンコーンカーンコーン……
そのとき、チャイムが鳴り始めた。教室の中が光に覆われていく。
嗚咽が喉に込み上げてきて、声にならなかった。何か言う代わりに、私は濡れた頬いっぱいに笑みを浮かべた。
それを見て、唯人はまぶしそうに目を細めて微笑んだ。細めた目から涙が溢れ出し、それは白い光の中で星屑のようにきらきらと光りながら頬を伝っていった。
「リリはどんな顔をしていても可愛いけど、やっぱり俺は、リリの笑った顔が一番好きだな」
十五歳のままの唯人と、二十七歳の私。
今までずっと、ひとつ年を重ねるごとに唯人が遠ざかり、どんどん過去の人になっていくような気がして怖かった。だけどその恐怖心が、自分の中から静かに消えていくのを感じた。
「リリにはいっぱい幸せになってほしい。だから——……」
唯人が何か言っている。
口が動いているだけで、声は聞こえない。聞こえないのに、私には彼が何と言ったのか、はっきりわかった。
——これからもいっぱい笑っていてほしいよ。