呼び出しベルを押そうとしたとき、ちょうど松下先生が職員室の方から現れた。


「おはよう、凛々子さん」

「おはようございます。あの、先生。これ……」


私はバッグの中からラッピングしたクッキーを取り出し、先生に渡した。


「昨日クッキーを焼いたので、よかったら息子さんと一緒に食べてください」

「まぁ! これ、凛々子さんが作ったの?」

「はい、そうです」

「すごく上手ね。まるでお店に売ってる焼き菓子みたい」

「そう言っていただけて嬉しいです」

「うちの息子、甘いものが大好きなのよ。だからあの子も絶対に喜ぶと思うわ。本当にありがとね」

「いえいえ。このクッキー、ふたりのお口に合うといいです」




それから私たちはぽつぽつと他愛のない会話を交わしながら、旧校舎に向かった。