どしゃぶりだった雨は、いつのまにか軽い霧雨に変わっていた。
その中を早足で歩くこと七、八分。両親が経営しているスーパーに着いた。
入り口のガラス戸から中を覗き込んでみると、奥の方で棚に商品を並べているお母さんが見えた。その隣でお父さんが大きなあくびをしている。
私は濡れた傘をたたみ、扉を開けて中に入った。
お父さんは私の姿を見ると、驚いたように目をぱちぱちさせた。お母さんも商品を棚に並べていた手を止め、こちらに首を回した。
「あら、凛々子じゃない」
「どうしたんだ?」
「ふたりに差し入れ持ってきたの」
「差し入れ?」
「うん」
店内を見渡した。お客さんはいなかった。私はバッグの中からタッパーを取り出した。
「これなんだけど……」
「クッキー?」
「うん、さっき焼いたんだ」
「えっ?」
お父さんとお母さんは弾かれたようにお互いの顔を見た。