紙の端がところどころ茶色くなっているレシピノートを机の上で開き、ページを一枚ずつめくっていった。
あぁ、これも作ったなぁ。
これも、これも……
しばらくめくっていくと、今日食べたクッキーのレシピを見つけた。ページの左上に赤いボールペンで花丸が書いてあり、「大好評だった!」とメモが添えてあった。
レシピはそこで終わっていて、あとは延々と白いページが続いているだけだった。
このクッキーを最後に、一度もお菓子を作っていない。
今日のみんなの笑顔を思い出して、無性にこのクッキーが作りたくなった。こんな衝動、十二年ぶりだった。
私はレシピ本を片手に階段を駆け下り、台所に入った。
キャビネと冷蔵庫を開けて中を確認すると、小麦粉、卵、バターなど、クッキーを焼くための最低限の材料は揃っていた。
残念ながら製菓用のココアパウダーはないけれど、砂糖の量を調整すればホットココアミックスで代用できそうだった。