「すみません。先生、お休みですよね」

「まぁ、そうだけど……」


先生は頬に手を当て、考え込むような仕草をしてから「でもいいわ」と言った。


「今週中に片付けておきたい仕事もあるし、明日は出勤する」

「本当ですか?」

「えぇ。ただこの間話したと思うんだけど、息子が明日の午後にこっちに到着するの。だからお昼前には学校を出ないといけないんだけど、それでもいいかしら?」

「大丈夫です。そうしたら明日の朝、何時頃に来てもいいですか?」

「午前中なら何時でもいいわよ」

「じゃあ9時頃でもいいですか?」

「えぇ、大丈夫よ」

「本当にありがとうございます」


先生は目を伏せ、いえ、と言った。その声に雨の音が重なった。




「では、今日はもう帰りますね」

「えっ、今来たばかりじゃない。もういいの?」

「はい」


私はくるっと教室に背を向けた。まだここにいたいけど、これ以上先生に心配をかけるのは嫌だった。


帰ろう。