「酔っ払ってるわけないでしょ」
唯人は腰をかがめ、私の肩に手を置いた。さっきまで馬鹿なことを言って大笑いしていた人とは別人のような、真剣な表情だった。
「どうした、リリ?」
「戻りたくないの」
「戻りたくないって?」
「昼休みが終わったら、みんな消えちゃう。私、またひとりぼっちに……うぅ……」
喉が詰まったようになって、あとの言葉が続けられない。
私は下を向き、唇を噛み締めた。噛み締めた唇がどうしようもなく震える。
キーンコーンカーンコーン……
チャイムが無情な音を立てて鳴り始めた。教室内が白い光に包まれ、みんなの姿が光の中に溶けていく。
「嫌だ! いなくならないで!」
「リリ、落ち着いて。大丈夫だから。ほら、ちゃんとここにいるから——……」
唯人の声が遠ざかっていく。智ちゃんの腕を握り締めている手の感覚が消えていく。