本当のことを話しても、また昨日みたいに先生を不安にさせてしまうだけだろう。
これ以上タイムリープの話を続ければ、最悪、精神病院に連れていかれてしまうかもしれない。それは嫌だった。
「でも凛々子さん——」
「——本当に何も見えていません」
私は先生の声にかぶせるようにして言った。
「一瞬だけ、クラスメイトの姿が見えたような気がしましたけど、それは私の錯覚でした」
「錯覚?」
「えぇ」
「昨日言ってたチャイムの音は?」
「あれも私の空耳だったと思います。今日は教室に入っても何も聞こえませんし」
「そう……なのね」
「はい」
私はきっぱりうなずいた。
「先生の言う通り、この旧校舎が取り壊されてしまうことにショックを受けて、ちょっと精神的に不安定になっていたみたいです。でももう大丈夫です。この教室に入っても、もう何も見えませんし、聞こえません」
「本当に?」
「はい。心配をかけてしまってすみませんでした。本当にもう大丈夫なので、少しの間、ひとりにさせてもらってもいいですか?」