水無月奏は僕の高校時代の後輩だった。二年の時に入った生徒会で初めて彼女と出会い、一人でいるところを僕が話しかけた。普段から女の子と積極的に話すような奴じゃないけれど、その時は彼女のことが純粋に心配だったのだろう。それから僕らは、校内ですれ違えば会話をする程の間柄になった。

 一人でいるところを見て、初めは内気な人なんだなと思っていた。だけど関わりを深めるに連れて、彼女の印象はグッと変わっていった。水無月はよく笑い、よく泣く女の子だった。友達が喜んでいると自分のことのように喜び、悲しんでいると、自分のことのように悲しむ。そんな女の子だった。

 僕がそんな彼女に惹かれて行くのは、至極当然のことだった。一緒に体育祭の運営や学園祭の運営をして、水無月との仲は更に深まっていった。これが好きだという気持ちに気付いたのは、二年生を半年ほど過ぎた時期だった。

 牧野遥香知り合ったのは、水無月に恋心を自覚するようになった頃。牧野は本当に内気な女の子で、水無月がそばにいなければ、僕とまともに話をすることができなかった。けれど水無月は彼女を連れて生徒会室へ来て、他の生徒会メンバーと一緒に、トランプやUNOなどのゲームを楽しんでいた。仲のいい友達ができればと気を使ったのだろう。

 水無月の思惑通り、僕は牧野ともそれなりに親しくなった。水無月といる時は、だいたい牧野も隣にいる。僕らは三人でいることが多くなった。

 そして季節が秋に移り変わった頃、牧野と水無月の会話から、水無月の誕生日が十一月五日だということを偶然知った。告白をする勇気はまだなかったけれど、プレゼントぐらいはあげてもいいんじゃないかと思い、何も言わずにこっそりと用意した。

 やがて冬がやって来た時に、体を冷やさないようにするためにと、赤色のマフラーを包装紙に包んだ。初めてのラッピングでなかなか上手く行かなかったけれど、十回ほど四苦八苦した頃にようやく納得のいくものができて、僕は満足した。

 そしてやってきた水無月の誕生日に、マフラーをサプライズでプレゼントした。その日は平日で、生徒会室で二人になったタイミングを見計らって渡した。彼女はこれ以上ないほど喜んでくれて、最後には泣いてくれた。重すぎて引かれるかと思ったけれど、彼女はやっぱりとても純粋な人だった。

 それからわずか数日後のことだ。

 僕は生徒会室で、牧野遥香に告白された。