アパートの駐車場に停めてあったヒロのドラッグスター。雨風避けの銀色のカバーを外すと、手入れされた黒いフォルムが顔を出す。
背の低い私のためにヒロが車体を傾けてくれて、まずは先に私が乗った。
「そんな下手くそにバイクに股がるのはお前ぐらいだよ」
ヒロにクスリと笑われて、けっこう前よりは上手くできたと思っていた自分が恥ずかしい。
そのあとヒロがヘルメットを渡してくれて、私が被ったのを確認するのと同時にヒロもバイクに乗る。
ヒロの背中なんて、もう何度も見てるっていうのに、バイクの後ろから見るヒロは普段より大きく感じる。
ヒロがエンジンをかけると、振動がお腹に伝わってきた。
「ってか、手」
ヘルメットを装着したあと、ヒロは顔だけを私に向ける。
「しっかり掴まっとけ。今日はこの前よりスピード出すから」
「う、うん」
ヒロの腰に手を回した私はとてもぎこちない。それでもぎゅっと力を入れると、ヒロはやっとバイクを発車させた。