ヒロぐらいカッコよかったら過去に彼女のひとりやふたりいるだろうし、こうして一緒に朝を迎えたことだってあるのかもしれない。
そもそも恋愛経験豊富じゃなかったら、私をこうして家に置いてくれないだろうし、まさかヒロってこう見えて遊び慣れてる人だったりするのかな。
そうだったらイヤだなと、なんだかひとりで落ち込んでる私はなんて幼いんだろう。
「今日バイトは……?」
ヒロはそのあと二度寝することはなかった。
邪魔だからと寝ていたマットレスを片付けたあとは、ソファーに寄りかかりながらテレビを見ている。
「んー、休み。ってかシフトそこに貼ってある」と、サイドボードに貼られている紙を指さした。
……あれってバイトのシフトだったんだ。
なにか貼られてあることは気づいてたけど、見ちゃいけないものだと思ってたから。
「俺、休みとか時間とか人に言う習慣がなくて、絶対これからも言い忘れるからあれで確認して」
「う、うん。わかった」
人に言う習慣がないってことは、ヒロに近い女の子は今のところいないって思ってもいいのかな。
そんなことを気にするなんて変なの。ちょっと前までは男が傍にいるだけで呼吸の仕方も忘れるほどだったのに。
「ってか、腹へんない?なんか買いにいこうぜ」
「どこに?」
「走りながら考える」
走りながらと言う言葉に違和感があったけど、そういえばヒロの移動手段はバイクだった。