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カーテンの向こう側が明るくなると、どこからか鳥の囀りが聞こえてきた。
ヒロの家で目覚めることにはまだ慣れないけど、そういえばここに来てから悪夢は見ていない。
もしかしたら私の不安定さが影響していたのかもしれないし、それは自分の憶測でしかないけど、このまま穏やかな気持ちでずっと過ごしていたい。
ベッドの下を見ると、ヒロはまだ寝ていた。
……バイトは大丈夫なのかな。でも昨日はアラームをセットしてる素振りはなかった。
起こさないようにそっとベッドから出て、洗面所に向かおうとしたけれど、ヒロの足が想像してたより長すぎて思いきり踏んでしまった。
「わっ、ごめん……」と、慌てて体勢を変えた瞬間に、今度はヒロがふっ飛ばしたタオルケットに滑って、そのままヒロのほうへと倒れこむ。
「なんだよ、お前。あぶねーだろ」
まるで添い寝するように私はヒロの寝ている横へと倒れて、目覚めたヒロと至近距離で目が合ってしまった。
「……ご、ごめんなさい」
ドクンドクンと、心臓が速い。
こんなにヒロの顔を間近で見たのは初めてで、改めて綺麗な顔立ちだと感心してしまうぐらい。
「起こしてもいいけどダイブはやめろ」
「ち、違う。滑ったの……」
私は口から心臓が出そうなほどドキドキしてるっていうのに、ヒロは悔しいぐらい冷静だ。