「星が綺麗だね」

私の視線の先にある天窓からは星空が見えて、寝ながら夜空を観賞できるなんて、こんな贅沢なことはないんじゃないかな。

すると、ヒロが「ふっ」と笑う。


「そうやって話を伸ばして俺を寝かさない気?」

「え、いや、そういうわけじゃ……」


でも、すぐに寝たくないと思ってるのは本当。
だって、こんなに寝るのがもったいないなんて思ったことはない。

みんなでお弁当を食べて、笑って、またヒロはドライヤーを面倒くさがって、でも私が熱風を向けると大人しくなって。それで今、星空を穏やかに眺めなからベッドの中にいる。

そういう楽しい夜なんて、今までの私にはなかったから。


「大丈夫だよ。明日も明後日も、また次の日もこんな風に同じ夜がくる。だから早く寝ろ」

たった二文字の返事さえできなかったのは、涙を必死に堪えていたから。


暫くすると、隣からヒロの寝息が聞こえてきて、私はそれに耳をすませながら、ゆっくりとまぶたを閉じた。