「は?なんの話?」
私の気持ちとは真逆にヒロがきょとんとしていた。
「だから彼女の話」
「いや、いねーし」
「嘘つかないでよ。私、知ってるから。ミキっていう人のこと」
「そりゃ、ミキのことは知ってるだろ」
ん?なんだかちっとも話が噛み合ってない。お互いになにを言ってんのって顔で少し沈黙になる。
「えっと、彼女の名前、ミキさんでしょ?」
確認するように私は聞く。
「だから彼女はいねーって。つか、どっから勘違いしてるか知らねーけど、ミキって奏介の名字だから」
……え?待って。頭が軽くプチパニック。
「アイツ三木奏介って言うんだよ」
「え、ええ?」
騒がしくしないと思ったそばから、つい大きな声が出てしまった。ヒロは「……たく」と呆れた表情をしているけど、ずっとミキさんが彼女だと思ってたから、まだ信じられない。
「で、でも奏介くんの名字〝馬鹿〟じゃないの?」
「は?」
「だって前にヒロのスマホに奏介くんから電話がかかってきた時に馬鹿って……」
「ぷっ」
私は真面目に言ったのに、ヒロがいきなり吹き出した。
「あはは。だからお前勘違いしてたの?つか、今までアイツの名字馬鹿って思ってたんだ。くく、ヤバい。つぼった。腹いたい」
ヒロはお腹を抱えてケラケラと笑っていた。