ヒロが座っているソファーに、ヒロが使っているスマホの充電器。ヒロが触っているエアコンのリモコンに、ヒロがいつも寝ているベッド。

見るもの全てが新しくて、全部ヒロのもので。

まさかこんな風にヒロのプライベートな場所に入れるなんて思ってもみなかった。


暫くすると、ヒロは作ってくれたものをテーブルに並べてくれた。

野菜炒めからは胡麻油のいい匂いがして、おまけにワカメスープまでついている。

しかもお茶碗に持ってくれたご飯は白米ではなく炊き込みご飯で、これをたったの15分で完成させてしまったことにビックリしてしまう。



「炊き込みご飯なんて作れるの?」

さっきは威勢よく手伝うなんて申し出たけど、正直私はあまり食に関心がないせいか料理は得意ではない。

だからほぐされたホタテが入っているご飯がまるで魔法の料理のように思える。


「冷凍のもの温めただけだよ」

「冷凍食品?」

「姉貴がわざわざ小分けにして送ってくんだよ。俺が作ったのは野菜炒めだけで、スープは粉末に熱湯入れただけ」

それでも野菜炒めは十分すぎるほどのクオリティだ。


「お姉さんがいるんだね」

「まあな。とりあえず早く食おうぜ。腹へった」


テーブルに向かい合わせで座り、相当お腹がすいていたのか、さっそくヒロが食べはじめる。

目の前にヒロがこうしてご飯を食べてるなんて、これは夢なんじゃないかって思うぐらい不思議だ。