ヒロの部屋にはテレビがあるけれど、今はつけられていない。もしかしたら寝ている私に気を遣ってくれたのかもしれないし、心遣いはものすごく嬉しいんだけど、静かすぎて沈黙が怖い。


「えっと、ヒロは……」

「なんか食ってく?」

「へ?」

「もう7時過ぎだけど」


し、7時過ぎ?

私が外に出た時はまだあんなに太陽が活動していたのに、閉められているカーテンの向こう側からは光がない。

私はどれだけ眠っていたんだろう。その間にヒロに寝顔を見られていたことを考えると、治まってきた頭痛がぶり返してきそうだ。


「好き嫌いある?ないなら適当に作るけど」

「ヒロが作るの?」

「あいにくうちにはお手伝いはいねーよ」

ヒロは慣れたように冷蔵庫を開けて食材を取り出す。そしてキッチンに立っている姿だけでなんだかもう手慣れているなって分かる。


「わ、私、手伝う!」

「邪魔だからそこにいろ」

「……う」

ヒロが包丁を使っている音が部屋に響く。


ヒロは絶対に料理なんてしない人だと思ってたから、すごく意外だ。そして妙に様になっているその姿に、私は観察するように見すぎてしまう。


ヒロの家、ヒロの家か……。

今さらキョロキョロと部屋を確認してみたりして。シンプルというより、とても家具や色にこだわっている感じがして、そこも意外。