途切れた記憶を遡ると、たしかに私はヒロの顔を見た瞬間で終わっている。
幻かと思ったけれど、どうやらまた私は意識を失ってヒロに迷惑をかけてしまったらしい。
「ごめん。私……」
「別にいいよ。たかがコンビニに行くために通りかかっただけだし」
それでもまた恥ずかしい姿を見られてしまった気がする。
意識がだんだんとはっきりしてくると、ヒロのベッドであろう場所に自分が寝ていたことや、なによりヒロの家にいることが急に現実になってきて、気持ちが落ち着かなくなってきた。
「わ、私、帰るね」と、ベッドから出ようとすると、制止するようにヒロの手が伸びてきて邪魔される。
「大丈夫だから。とりあえずこれ飲め」
ヒロになだめられながらペットボトルの水を受け取ったけれど、まずは水を飲むよりも色々と聞きたいことがありすぎて……。
「ご、ご両親とかは?」
「俺、ひとり暮らしだし」
「え、そうだったの?」
ふたつしか年齢が変わらないのにひとり暮らしとかすごい。そもそもヒロはまだ高3だっていうのに、ますます大人に感じてしまう。
「だから別に遠慮することないから、水ぐらいゆっくり飲め」
そう言われて、私はやっと冷たい水を喉に流すことができた。