「……ねえ、おばあちゃん。私があの家でなにをされてたか知ってるでしょ?」
詳しい詳細は分からなくても、あの男と母が再婚したことで私は人格までもが変わった。
そういう私の変化に気づいていたくせに。パーカーを手放せないことも、わざわざ他県の高校を選んだ理由も全部全部分かっているくせに、あのふたりを私に会わせようとするなんて、信じられない。
「度が過ぎたしつけをされていたことは知ってる。それがサユにとって苦痛だったことも、寛之さんに馴染めなくてあまり関係がうまくいってなかったことも分かってるわ」
「ちょっと待ってよ。それ本気で言ってるの?」
くらっと後ろに倒れそうになったのは気のせいじゃない。
おばあちゃんが私の深い部分に立ち入らないのは、全てを察しているからだと思ってた。
でも違った。
おばあちゃんは全然私のことなんて理解してなかった。
度が過ぎたしつけ?
馴染めなかった?
上手くいかなかった?
私がそんな理由で、おばあちゃんの家で暮らすことを選んだと思っていたの?
そんな簡単な答えで、あの5年間を語るの?