ドクンッドクンッと、身体の中で暴れてるみたいな音。
い、今のは聞き間違い?
するとおばあちゃんは私の気持ちなんてお構い無しに先ほどの言葉に付け足す。
「お互いに長期の休みが取れたらしいの。滞在期間は10日ぐらいって言ってたけど」
思わず私は手に持っていたシャーペンを床に落とした。むし暑かった部屋が急にひんやりとした空間に変わって、小刻みに指先が震えはじめる。
おばあちゃんが言った哉子と寛之とは母とあの男のことだ。この流れからして、さっきの電話は母からだったのかもしれない。
明後日?里帰り?10日?
じわりじわりと現実味が増してきて、自分の体温がどんどん奪われていく。
休みが取れたからって、なんでこっちに来るの?
一緒に暮らしていた時はおばあちゃんの家に行ってもなにもないと母は日帰りでも行こうとはしなかったし、外面だけはいいあの男だって家ではおばあちゃんのことを『ばばあ』と呼んでいた。
だから、わざわざあのふたりが里帰りなんてしにくるはずがない。