――コンコン。
と、その時、部屋のドアがノックされた。
「サユ?ちょっといい?」と言うおばあちゃんの言葉に私は慌ててパーカーを羽織る。いつも二階に上がってくる階段の音が聞こえるのに、セミの声で分からなかった。
「う、うん。いいよ」
焦ってないふりをして合図をすると、ゆっくりとドアが開いた。
おばあちゃんがこの時間に部屋にくるのは珍しい。
いつも晩ごはんができた時や夏休みに入ってからはお昼ごはんを食べるのかどうかも聞きにきたりするけど、昼食のそうめんは1時間前に食べたばかり。
「どうしたの?」
ただでさえ暑いというのに、パーカーを着たせいで、もわっと体温が上がる。
なんだかアイスが食べたいな。さっぱりとしたソーダみたいなやつ。
コンビニまでは遠くないけど、この炎天下に出ることを考えると腰が重たくなる。
そんなことをぼんやりと考えていると……。
「哉子(かなこ)と寛之(ひろゆき)さんが明後日からうちに里帰りしにくるって」
……ドクンッと、心臓が飛び上がった。