奏介くんは花火を空中で回しながら絵を書こうとしていて、どうやらヒロの顔らしい。
「スゲー似てない?」と、ぼんやりと煙で浮かんできたのは、とても変な顔。
「それお前じゃね?」
「いやいや、ヒロでしょ」
「お前そっくりだよ。よかったな」
なんだか言い合っているヒロが子どもみたいで可愛い。
そういう一面もあるんだって知れたことと、ふたりのやり取りが面白くて、気づくと私は笑っていた。
すると、ヒロと目が合って、またクスリとされる。
「お前はそういう顔してたほうがいいよ」
……ドクンッ。
その眼差しが優しくて、私は泣きそうになった。
「じゃあ、次は打ち上げ花火しよう」と、奏介くんが準備をしはじめて、私たちは花火から距離をとる。遠くでその作業を見つめながら、私はやっぱりヒロの横顔を見すぎてしまう。
「ヒロありがとう。誘ってくれて」
じゃなかったら、私はまた味が感じないご飯を食べて、自分の身体を見たくないからさっさとお風呂に入って、夢の中であの日々を繰り返す。
そんな1日の終わり方をするだけだった。
「……また、誘ってくれる?」
ヒロはバイトで忙しいし、なにより彼女もいる。だから、こんなことを言うのは迷惑だって分かってる。