「なに話してたんだよ、アイツと」
「えっと、ヒロが奏介くんと喧嘩してボコボコにした話?」
「……ったく。そんな昔のことを」
もしかしたらヒロは自分の話を自分がいないところでされることがイヤなのかもしれない。
じゃあ、私がヒロに聞くことはアリなのだろうか。ゴクリと唾を飲み込んで私は声を出す。
「ヒ、ヒロの好きな色はなんですか?」
勇気をだして聞いたことは小学生みたいな質問。
「は?べつにないけど」
「じゃあ、好きな動物とか……」
「いねえ」
初歩的なことから知ろうと思ったのに失敗した。そもそも色とか動物とか聞いてどうすんのって感じ。
私のコミュニケーション能力なんて5年前で止まったままだから、距離の縮め方なんて全然分からないのだ。
「なら、お前の好きな色はなんだよ」
「へ?」
おうむ返しのように質問されてしまい、「あ、青かな?」と、とっさに答える。
「じゃあ、好きな動物は?」
「自分より小さいもの」
「好きな天気は?」
「暑くない晴れの日」
「血液型は?」
「A」
「誕生日は?」
「6月10日」
「じゃあ……」とまだまだ続きそうだったので、私は慌てて止める。
「わ、私はヒロのことを知りたいの!」
思わず出てしまった言葉に口を押さえたけれど、すでに遅くてヒロにクスリと笑われてしまった。