「んー付き合ってる人?今はいないんじゃない?昔からヒロはモテるけど、いつも女なんていらねえって感じだよ?」

でも〝ミキ〟って呼んだ名前は聞き間違えじゃないし、一緒にいるところも見たから、奏介くんには言ってないだけなのかもしれない。


「まあ、男同士だとあんまり恋愛話はしないし、いつも俺が一方的に話を聞いてもらうほうが多いかな」

うん。なんとなく想像はつく。いつも奏介くんのお喋りにヒロが気だるそうにしながらも聞いてあげてるなって印象だったから。 


「仲良しなんですね」

ふたりを見てると、学校にいるうわべだけで集まってる人たちとは違うって分かる。


「うーん、仲良しって言われると照れるんだけど。ヒロとはもう6年くらいの付き合いかな。同じ中学でね、俺が喧嘩吹っ掛けたらボコボコにされたの」

ボコボコにされたと言ってるわりには「あはは」と奏介くんは嬉しそう。


ヒロはなんとなく喧嘩が強いイメージは湧くけど、奏介くんが吹っ掛けたというところがあまり想像できない。

そんな心の声がどうやら顔に出ていたみたいで、「俺もそれなりに強いんだよ?」と続ける。


「ヒロと会うまでは負けたことなんてなかったし、俺を見るとみんな泣きながら逃げてくんだから」

本当かな?今のはちょっと盛った気もするけれど。


「ヒロに負けた時、悔しいって思えないほど、かっけーなコイツってなっちゃって。それから俺がヒロに付きまとってる感じなんだけどね」

そうやって素直に口に出せちゃうところがきっと奏介くんのいいところなんだと思う。