次の日。私は学校に行くことにした。

夏休みまであと一週間だし、本当はこのまま休み続けてしまったほうが楽だけど、そしたら夏休み明けの学校がもっと行きづらくなると思ったから。

もちろん4日余りで私への視線がなくなることはなく、校門を抜けた時点で「ほら、あの子」と指をさされてしまった。


こんな風に惨めな気持ちになると、やっぱりあの男や母への憎悪は増す。

きっとふたりは私がいなくなったことでもっと楽しい生活をしてるのに、私の時間だけが止まったまま。


教室の空気は居心地が悪くて、私は屋上へと逃げてきてしまった。貯水槽の日陰に体育座りをしながら、私は空を見上げる。

そこには大きな入道雲が浮いていて、なんだか天空の城でも隠れていそうな雰囲気。

そんなことを思える余裕があるのは、まだ昨日の余韻が残っているから。



――『サユもやる?』


あれは本当に不意討ちというか、かなりドキッとしたな。


そうやってヒロの中に私という存在が認識されてるってだけで、誰とも繋がりがなかった私が、誰かと繋がってるんだって思える。

と、その瞬間。タイミングよくヒロからメールが届いた。


【今日の7時に海に集合】

文は一行だけのシンプルなものだった。なんの主語もないけれど、昨日言っていた花火のことだって分かる。

私は初めて男の子にメールを返した。


【了解】


やっぱり可愛らしい絵文字なんて打つことはできなかったけど、約束事があるってことが、こんなにも孤独を消してくれるものだなんて、初めて知った。