教室ではあちらこちらで「おはよう」という声が飛んでいた。それが私に向けられることはなくて、騒がしいクラスメイトたちを突っ切って窓際の自分の席へと座る。

私が学校をサボッても誰も気にすることはない。


それを寂しいと思わないのは、ひとりでいることが私にとっては普通のことだから。

それでも、保存したカニの写真を何度も見てしまうのは、こうして同じものを誰かと共有していることが嬉しい。


それから午前中の授業がはじまって、今日も2限目に体育があった。

昨日はまたマラソンだったらしいけど、今日は他のクラスと合同のバスケ。憂鬱なことに変わりはないけど、外より体育館のほうがまだ暑さはマシだ。


クラスメイトたちが次々と着替えて教室を出ていく中で、私は誰もいなくなるタイミングを待っていた。

男子がいない女子校は着替えるのも教室で、窓が開けっ放しになっていても平気で下着姿になったりする。


私はカバンに入っているジャージを机の上に置いて、カーテンを閉めた。そしてゆっくりとパーカーを脱いで、襟元のリボンをシュルッとほどく。


ワイシャツのボタンを一つひとつ外しながら、見ないようにしても見えてしまう黒ずんだ傷痕。

お腹や脇腹を蹴られた回数が多いからか、斑点模様はその部分に集中している。


自分の身体なんて鏡で見たくもないから、確認はしてないけれど、背中もひどいことは知っている。

クラスメイトたちの身体はすごく綺麗なのに、私は汚い。