「どっちがいい?」と聞かれて、ヒロの手にはレモン味の清涼水とソーダ味の炭酸。私がレモン味のほうを指さすとヒロは飲み物を渡してくれて、同じように砂浜に腰を下ろした。

隣でヒロがプルタブの缶を開けるとシュワッと炭酸が弾ける音がする。


「あ、えっと、お金……」

「いいよ、べつに」

そう言われても昨日もミネラルウォーターを買ってもらったし、立て続けだと悪い気がしてくる。

ゴクゴクと喉を鳴らして炭酸を飲むヒロをつい見すぎてしまって、私は気づかれないようにペットボトルのフタを開けた。


「……そ、奏介くんは?」 

一緒に買いにいったはずなのに姿がない。


「ああ、なんか途中でふたり組の女がいて声かけにいった」

奏介くんって多分というか、かなりの女好きだと思う。私に対しても距離感が近い気がするし。

   
「もしかして……私がいるから戻ってきたの?」

「ちげーよ。俺はそういうの面倒だし、興味もないから」

興味がない、というより彼女がいるから、じゃないのかな。そんなことわざわざ聞いたりはしないけど。

ヒロは奏介くんとは違って、あまりお喋りじゃない。だからこうしてすぐに沈黙になったりするけど、それが苦痛ではなかった。 


……あ、意外とまつ毛が長い。

ピアスはしてないけど、耳に穴は開いている。そんな細かいところまで私はチラチラと見てしまう。


どうしてこんなに心が穏やかなのかな。もしかして男嫌いが治ったんだろうか。