「……少しなら」

行くとはっきり言わなかったのは、自分なりに予防線を張った。途中でダメになったらいつでも帰れるように。


そんな私の気持ちなんて知らない奏介くんは「じゃあ、行こう!」と、早速バイクの元へと行く。


「サユちゃんはヒロの後ろね」

……え、ちょっと待って。

あまり考えなしに受け入れてしまったけれど、ふたりの移動はバイクだ。と、なると一緒に行くには私も乗ることになる。


「ほら」

私の戸惑いなんて無視して、ヒロからヘルメットが飛んできた。私はそれを条件反射でキャッチしてしまった。


バイクの後ろに私が乗る?

それは想定外というか、色んなことを飛び越えすぎていて、不安が芽生えはじめる。


「お前、ジャージとか持ってねえの?」

「え、ジャ、ジャージ?」

「下。たぶんスカートめくれる」


見た目は不良なのに、そんな気遣いをしてくれたヒロが悪い人ではないということはもう知っている。

カバンの中にジャージが入っていたから、私はスカートの下に履いた。


もう後戻りはできないと、ゆっくりとバイクの後ろへと乗る。もっと固くてお尻が痛いと思ってたのに、座る部分のシートにはクッション性があるみたいで、意外と座り心地は悪くない。

「荷物は俺が預かるね」と、奏介くんが私のカバンを運んでくれることになり、奏介くんもバイクに股がった。