「これからカラオケでも行かない?飲み物のサービス券あるし、部屋代も払わなくていいからさ」
ぞろぞろと私を取り囲む男子たち。数は4人。まるで檻に入れられたように逃げ場がなくて、鼓動はさらにうるさくなっていく。
「っていうか、なんでこんなに暑いのにパーカー着てるの?日焼け対策?」
ゲラゲラと笑う低い声が鼓膜に直接響いてくる。
さっきまで暑かったはずの体温が一気に冷たくなって、ぎゅっと握っている指先が小刻みに震えはじめた。
「もしかして俺ら無視されてる?なにか喋ってよ」と、腕を触られてビクッと身体が跳び跳ねる。
イヤだ。イヤだ。気持ち悪い……っ。
怖さで声が出せずに私は唇を噛み締める。そしてバクバクと心臓がうるさい中で、私は勢いよく駆け出した。
「あー、待ってよ」と言いながら、また男たちの笑い声が後ろから聞こえてくる。
私は振り返ることなく、ただ全速力で男たちから逃げ切った。