私も学校なんて本当は行きたくない。

行ったところで誰かと会話することもないし、たしか3限目にはまた体育があったはず。どんな内容でもまた暑い中で長袖を着て身体を動かさなきゃいけないと思うと頭痛がしてくる。


「じゃあさ、これから海に行かない?」

「……え?」

奏介くんの言葉に私は固まった。すると、すぐにヒロがため息をつく。


「海ならすぐ側にあるだろ」

「地元の海じゃなくて、もっと広いところ!ヒロは分かってないなあ」

「お前、海は繋がってるって知らねーの?これだから中卒は」

「あ、今の差別発言!」


ふたりの会話から推測すると、どうやら奏介くんは別の海が見える場所へと移動しようとしてるらしい。

ふたりはただでさえ目立つから、すれ違う人やコンビニを利用しに来た人たちがしきりに彼らに注目する。

でも見られることに慣れているのか、全く動じることはなく、むしろ板挟みになっている私のほうが挙動不審になっていた。


「ねえ、サユちゃん。行こうよ」

再び、奏介くんが誘ってくる。


正直、男とどこかに行くなんてありえないし、いつもの私なら逃げていた。

現にコンビニの前の喫煙所でタバコを吸っているサラリーマンには怖さを感じるし、煙の匂いだけで野菜ジュースが喉まで上がってくるぐらいの嫌悪感もちゃんとある。 


なのに、私はふたりの会話なら冷静に聞けるし、目の前にいても指の震えはない。

それがかなり自分でも驚いているし、理由なんて私には分からないけれど、このまま学校に行くほうが今は苦痛に思えてしまった。