平日だというのに、ヒロは何故か私服だった。
白いTシャツに黒のズボン。シルエットがコンパクトなギャップを後ろかぶりしていて、子どもっぽいというよりはやんちゃっぽい雰囲気。
ふだつきの不良みたいな奏介くんとは違うファッションだけど、身長が高くてスタイルがいいから、やっぱりどんな格好でも目を引く。
「なんだ、またお前か」
私を見るなりヒロが一言。あたかも私が好き好んで現れたみたいな言い方だけど、こっちは別に鉢合わせしたくてしたわけじゃない。
奏介くんはいつも私服だからいいとしても、今日は木曜日だし、晴丘が開校記念日じゃない限り休みなはずがない。
そんな疑問は私が聞くまでもなく、奏介くんがペラペラと教えてくれた。
「俺らバイトの帰りなんだ。朝までやってきたなんて超勤労男子でしょ?」
バイト……?
ってことは朝ごはんでも買いにコンビニに来たのだろうか。
朝までかかるバイトなんて怪しい感じしかしないけれど、ふたりは特に疲れてる様子はなくて、いつものことって感じでおにぎりを食べている。しかもたったの二口で食べてしまうところが女の私とは違う。
「サユちゃんはこれから学校?」
奏介くんに聞かれて私は小さく頷く。
ヒロは二つ目のおにぎりを食べはじめて、それも二口で間食して、すぐにコンビニのゴミ箱へと袋を捨てていた。
きっと今日は学校には行かないのだろう。
路肩にはバイクが2台停まっていて、ひとつは奏介くんの。もうひとつは昨日見たばかりのヒロのドラッグスターだった。