一難去って、また一難とはまさにこのこと。最悪すぎてため息も出ない。
「こんなくそ暑い日にパーカーを着てるのはきみぐらいだからすぐ分かっちゃったよー」と、昨日と同じように四人組で私を囲う。
……どうして男はこうやって、すぐに弱いものを押さえ込もうとするんだろう。
女が力で勝てないことを知っているから、こうして逃げ場をなくして優位に立とうとする。
吐き気がする。汗くさい匂いも、私に向けられている視線も、なにもかもがイヤで仕方がない。
「今日もひとり?っていうかなにしてたの?あ、ひょっとして俺たちのこと待ってた?」
どっと、吹き出す笑い声に、私の身体はさらに小さくなる。
「返事しないってことは、認めたってことだよね。じゃあ、早速近くのカラオケに行こうか」と、ひとりの男子に肩を組まれてゾッと背中に寒気が走る。
……イヤ。やめて、やめて。触らないで……っ。
頭に浮かぶのは、いつだってあの日々のことばかり。
『こっちに来い』と無理やり手を掴まれて引きずられたことや、『苦しいだろ』と首を絞められたこともある。
私の身体を押さえつけて、私はただ痛さや恐怖に耐えるしかなかった。だから、男なんて嫌い。大嫌いっ……。
「おい」
すると、コンクリートにまた影が増える。男子が一斉に声がしたほうに向くと、その顔色がみるみる青くなっていく。
「げ、ゆ、結城(ゆうき)先輩……」
私の時は舌に油でも塗ったようにペラペラ動いていた口が、急に重いものに変わった。