そして次の日も私は学校が終わるとすぐに病院へと急いだ。病室のドアを開けると、今日は奏介くんの姿があった。


「俺の彼女、可愛いだろ?」

ベッドにいるヒロに奏介くんはしきりにスマホの画面を見せていた。


「羨ましかったら早く退院しろよ」

「羨ましくねーから」

「そんなこと言って俺に彼女ができて本当は寂しいんでしょ?」

「だからそういう発想がキモい」

ふたりの仲良しなやり取りが相変わらずで、私はクスリと笑ってしまった。


「あ、サユちゃん。今度俺の彼女も交えて4人でダブルデートしに行こうよ!」

「ふふ、考えておきます」

「さすがサユちゃんは話が早くて助かるよ。ヒロは頭がカチコチに固いからさ」


「おい」

ヒロが呆れた顔をしたところで奏介くんは逃げるように「俺これから仕事だからまたね」と、颯爽と帰ってしまった。


まるで嵐が去ったあとみたいに病室が一気に静かになった。奏介くんはきっとまだヒロの病気を受け入れられていないけれど、しんみりとさせないところが奏介くんらしい。


喧嘩をしたあとのことが心配だったけれど、仲直りもいらないみたいにふたりの関係はいつもどおりになった。

その唯一無二の絆が、やっぱり私は羨ましい。