……早く、この人から離れたい。

そんな私の気持ちとは裏腹に、どこからかバイクの聞こえてきた。騒がしい駅前でもかなり響くその音は駅のロータリーを一周して、噴水の傍で止まった。

エンジンを切り、ヘルメットを取ったその人の顔もまた見覚えがある。


「お、無事に戻ってきたんだ」

男の視線は手渡したばかりのスマホに向いていた。


「なんでわざわざ来るんだよ」

「だって心配じゃん。ヒロのスマホには俺らの愛の写真がいっぱい――」

「キモい、黙れ」

このやり取りからして、きっとこの人は電話をかけてきた〝馬鹿〟という人に違いない。

この人もまた茶色い髪の毛に、耳にはシルバーのピアス。おまけに穴は拡張してあって、どう見ても不良だ。


「へえ、この子が昨日の子か。こんにちは」

話しかけられて、私はバッと視線を下げる。

きっとかなり感じが悪いと思われただろう。それでも身体に染み込んでいる男に対しての恐怖心がなくならない。


「ねえ、ヒロ。この子にお礼しなよ。スマホ拾ってくれたんだし」

「あ?なんで?」


見た目は同じ不良なのに、話し方は対照的なふたり。

……お礼なんて全然いらない。むしろ早くこの場から立ち去りたい。そんなことを思いながら、私は相変わらずうつ向いたまま。