そして時間が止まってくれるわけもなく、放課後になってしまった。

本当は逃げたくて仕方がないけど、この黒いスマホがある限りまた電話がかかってくるだろうし、返してしまえばそれで済む話。

それでも憂鬱すぎて、学校から駅までの道のりが体感的にかなり長く感じた。


駅前に着くと、ちょうど学校帰りの学生たちがたくさんいた。

人が多い場所は苦手だし、なにより視界に男がいるだけで気持ちが萎縮してしまう。


……早く渡してさっさと帰りたい。

だけど考えてみれば駅と大雑把に言われただけで、細かい場所の指定はされていない。

どうしようと辺りをキョロキョロとしていると、噴水の前に一際目立っている人を発見した。


制服は私の苦手な晴丘男子校のものを着ていて、なにより太陽よりも眩しい金髪がすれ違う人の注目の的になっている。

男なんて嫌いなくせに、鮮やかな髪色に少しだけ目を奪われてしまった。


すると、ふいに目が合ってしまい、ギロリと睨まれる。

ヤバいと視線をずらしたけれど、なにか癇(かん)に障ってしまったのか、彼が私のほうに歩いてきた。