「ベッドが隣同士で仲良くなって、普通に明るくて可愛い子だったけど脳の病気だった」
「………」
「それで、一年ぐらい一緒の病室で過ごして、その子は病気が悪化して昏睡状態になったんだ。俺は毎日励ましたり手を握ったけど、全然起きなくて。そういう状態が1か月続いた時に、女の子が寝てたベッドが空っぽになってた」
ヒロは淡々とした口調だったけれど、視線はずっと海を見つめていて、すごく寂しそうな顔をしていた。そして、少し間を空けたあと、再びヒロが話し出す。
「先生は別の病院に移ったって言ってて、次の日に、俺のドナーが見つかって、すぐに手術することになったんだ」
その言葉を聞いて、頭をかすめては消えていく、ひとつのこと。
「手術は成功して、死ぬはずだった俺の寿命は伸びた。でも……提供してくれた心臓がその子のものだって聞かされたのは、手術が終わってからだった」
ドクンと動揺した私の鼓動はヒロに聞こえてしまっていたかもしれない。
「泣いたよ。悔しくて。俺はその子が死んだ代わりに生きたんだって」
そんな切ないヒロを見て、私は以前ヒロがこの海で言っていたあることを思い出した。