ヒロの胸からはドクンドクンと心臓の鼓動が聞こえた。それは今のヒロの命を繋いでいるもの。
穏やかで心地いい心音なのに、私は泣くことしかできない。
「……ヒロ、ごめん……っ。私、こんなに弱くて」
私が先に泣けばヒロは泣けなくなる。
だから大人になんてなれなくても、せめて追いかけるんじゃなくて、肩を並べられるぐらい強くなりたいと思ってた。
なのに、なのに……。
「そんなの知ってるよ」
ヒロが優しく囁く。
「……私、ヒロの病気のこと知ったよ……」
「うん」
「今のヒロの心臓にタイムリミットがあるってことも知ったよ」
「うん」
本当は怖くて、たまらない。
でも、好きな人が抱えているものを怖いという理由で逃げてしまえば、私は臆病者な自分に逆戻りしてしまう。
怖いけれど、現実を見なければいけない。
大切なヒロのことなら、尚更に。
「……私は弱いけど、まだ全然覚悟なんてないけど。全部、話してくれる?」
震える声でヒロの洋服を握った。
「うん」
そして、最後のヒロの返事だけは、私と同じように震えていた。