「こっちに来てよ」
私の気持ちなんて知らずにヒロが言う。
「で、でも私まだやることあるし……」
「来て」
今度は強く言われてしまい、私はゆっくりとヒロのほうに近づいた。それでも今はまともに顔を見る自信がないから、ベッドにちょこんと座っただけ。
その下で横になっていたヒロは上半身だけを起こして、じっと私のことを見つめている。
……あんまり見ないでほしい。
私はこの射るような瞳には弱いのだ。
「ちょっとここに座ってマッサージして。ずっと寝てたから腰が痛くて」と、布団の上をヒロは指さす。
「マッサージとかしたことない」
「うん。でもしてほしいからもっと近くにきて」
……なんだかヒロが変だ。
そう思いながらも私は布団の上へ。「どこをマッサージしたらいいの?」と聞くと「じゃあ、肩」とヒロが言ったので、私は慣れない手つきで肩を揉む。
ヒロの肩は広くて大きい。それなのに目に見えない病魔が身体に潜んでいると思うと胸がぎゅっと締まる。