――『夕方の4時に駅前で待ってるから、逃げんじゃねーぞ』
その言葉を思い出して、鉛のように重いため息をつく。
こんな時、私の代わりを頼める人がいたらいいけど、残念ながら友達はいない。
そういえば私、友達なんていたことあったっけ。
たしか小四までは休み時間に話したりできる関係の人はいた。
でも暴力を振るわれるようになってからは、身体のアザを隠すような生活になってしまったし、幸せそうに家族の話をされると、私にないものを見せつけられている気がして余計にツラくなった。
きっと、その感覚は今も同じだ。
恋愛話に花を咲かせて、オシャレを楽しんでいるクラスメイトと私とは経験してきたものが違う。
日焼け止めを塗りまくって「焼けるの怖い」なんて言う人たちと、内出血を繰り返して消えることのない傷が無数にある私。
「でも海は行きたいよね」なんて笑う人たちと、夜の海を見て死ぬことを考えてる私。
そんなクラスメイトと私の距離は、あの燦々と稼働し続けている太陽よりもずっと離れている。