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次の日。私は一睡もできずに朝を迎えた。食欲なんてあるわけもなく朝食は取らずに学校へと向かう。


ジリジリと地面を照りつけている太陽は今日も雲に隠れる気はないみたい。

気温は言うまでもなく半袖でも暑いくらいだけど、私は腕を隠すために黒色のパーカーを着ていた。


すれ違う人たちの〝暑くないのかな〟という視線にはもう慣れた。私は耳にイヤホンをつけて、スマホをタップする。

選んだ曲はアップテンポだけど、私のテンションが上がるわけがなく、気分は憂鬱なままだ。


学校に着いて教室に入ると、また甘ったるい匂いが鼻を通り抜ける。

男がいなければどこでもいいと、おばあちゃんの家から近場の女子校を受験したけれど、もう少し静かな学校を選べば良かった、なんて今は思ってる。


偏差値は平均でハードルも低くて、おまけに制服はブルーのワイシャツにチェック柄のスカートと可愛い部類に入るらしい。

だから、真面目で大人しい人はあまりいなくて、クラスメイトたちも休み時間ごとに化粧を直すほど美意識が高い。


「昨日、うちの彼氏がさー」
「誰かいい人紹介してよ。顔は塩顔がいいな」
「今度、他校の男子と遊びに行くんだけど、日曜日空いてる人いる?」

そして、話している内容は色恋ばかり。

私はそんな話し声を左から右へと流して、頬杖をつきながら窓の外に目を向けた。