考えてみればずっと離れて暮らしていたし、母やあの男も滅多におばあちゃんの家に顔は出さなかったから、私のことだっておばあちゃんが詳しく知るすべなんてなかったのだ。
私は自分の口からは語らないくせに、理解してほしいという気持ちだけは一丁前にあって。
おばあちゃんに対しても私はきっと甘えていた。
壁を作ってるのは自分なのに、おばあちゃんが気を遣って踏み込んでこないからだ、とか。
毎日ご飯を作ってなに不自由ない生活をさせてもらっていたのに、本当は私のことが邪魔なんでしょって、そんな考え方しかできなくて。
心はたしかにボロボロで荒んでいたけれど、性格まで荒んでしまう必要なんてなかった。
なにも聞かない、聞かれないってことは私に関心がないからじゃなくて、私が話すのをおばあちゃんも待っていたんじゃないかって。
ヒロがそうだったように、それはおばあちゃんの優しさだったのかもしれないと、今は気づけるようにもなれた。
夏休みが終わったら家に帰ろう。
それが、まずは私の第一歩だ。