それから一時間ほどしてヒロは帰ってきた。その手には紙袋があって中を確認すると綺麗に折り畳まれた制服が入っていた。


「ヒロありがとう。……おばあちゃんなにか言ってた?」

まさか友達が男なんて、おばあちゃんは思ってなかったと思う。


「んー特に」

どうやらヒロは身構えて行ったのに、むしろ質問されなくて驚いたと言葉を続けた。そして……。


「でも最後にサユがご迷惑おかけしてますがよろしくお願いしますって、俺に丁寧に頭を下げてたよ」

おばあちゃんの光景が目に浮かんでズキンと胸が痛む。


家を出た時は冷静じゃなかった私も少しずつ心に余裕ができて気づいたこと。

それはおばあちゃんに悪意はなかったということだ。


きっと私が過去に受けた傷で苦しんでることとか、あの男や母の存在に縛られてることとか、身体中にある傷痕が悲しくて仕方がないこととか、そういうことをおばあちゃんは本当に知らなかっただけ。


大したことはない。ただ度が過ぎたしつけをされて、関係が上手くいかなくて私は反抗期の延長でわざわざおばあちゃんの家から高校に通うことを選んだって、おばあちゃんはそう思っていただけだったんだと思う。