「じゃあ、制服は俺が取りに行ってやるよ」
今日ヒロのバイトの出勤はお昼過ぎなので、午前中はのんびりと過ごす予定だった。
ヒロはすでに行ってくれる気になっていて「家わかんないから道だけ教えて」と、紙とペンまで用意してくれた。
「で、でも……」
ヒロに取りにいってもらうのは、なんとなく悪い気がする。
あの男と母はあれから10日以上経過したからきっと自宅に帰ったはず。でもふたりがいなくても、あんな形で家出をしたからおばあちゃんには会いづらいし、まだ家に帰る気にもなれないんだけど……。
「郵送してもらうわけにもいかないんだから、制服だけ受け取ってくるよ。でもいきなり行ったら不審者だからお前から家の人に連絡だけはしといて」
「……う、うん」
私はすぐにスマホでおばあちゃんにメールをした。
長い言葉は使わずに【友達が制服を取りにいくから、用意だけお願いします】と、あまりに他人行儀みたいな文章になってしまったけど。
……おばあちゃんメールに気づくかな。
ヒロが行ったらかなり驚くと思うけど、ヒロがあれこれと質問責めにされないか心配だ。
そんな心の声を察したようにヒロがバイクの鍵を持って、いつものようにぽんぽんと私の頭を撫でた。
「お前がどこにいるか聞かれても言わないから安心しろ。でも誰といるかぐらいは教えておいたほうがいいだろ」
ヒロはそう言って、のんびり過ごすはずだったのにすぐに出掛けてくれた。