『こらこら、女の子にそんな言い方したらダメでしょ』
『あ?てめえは黙ってろ』
なにやら電話の向こう側で言い争っているけど、そんなことはどうでもよくて。私は一刻も早く電話を切りたくて仕方がない。
「た、たまたま拾ったんです……」
私は精いっぱいの声を出す。それでも声は上擦ってしまって、そのあとの言葉が出てこない。
拾ったから私も返したい。でも直接じゃなくて、どこか指定してくれたらその場所に必ず置いておく。
そうやって、はっきりと言いたいのに喉が塞がって声が詰まる。
『じゃあ、明日でいいから返して』
「……え?」
『夕方の4時に駅前で待ってるから、逃げんじゃねーぞ』
プチッと一方的に切られてしまった電話。画面には通話終了の文字。
ま、待って。明日の4時に駅前?
つまりそれって、また男に接触しなきゃいけないってこと?
考えただけで、気分が悪くなってきた。やっぱりスマホなんて拾うんじゃなかった。