こんな時にまた男からつけられた傷痕がひどく暴れていることが悔しい。私の涙目を見て男は「ふっ」と鼻で笑う。


「そうそう。お前はそうやって俺に許しを乞うような目をしてりゃいいんだよ」

その言葉にヒロがグイッと男の胸ぐらを掴んだ。



「お前がサユになにしたか知らねーけど、さっさとその口閉じねーと気絶だけじゃ済まねーぞ」

「俺に手を出す気か?俺はこいつの父親だって聞こえなかったか?」


私たちの騒ぎに気づいた通行人やコンビニにいた人たちが周りに集まりはじめて、なにやらどこかに電話してる人もいる。


ヒロもそれを察して胸ぐらを掴む手を緩めたけれど、離すと同時に男の身体を突き飛ばすようにして押した。


「ただの父親ならサユはこんなに怯えたりしねーよ。今日は逃がしてやるけど、今度サユの目の前に現れたら……俺、あんたのこと殺すから」

  
ヒロの本気の目に、男が後退りをする。


「大丈夫か?」と、ヒロに支えながら私は立ち上がって、騒ぎが大きくなる前にその場から立ち去ることにした。