ヒロはじっと私を見つめたあと、ただ無言でぽんぽんと頭を撫でる。


じわりと溢れてくるヒロへの想い。

あれだけ迷惑はかけたくないって思ったのに、ヒロの優しさにまた私は救われてしまった。


ヒロはなにも聞かなかった。

夢にうなされていたことも、過呼吸になったことも、そこに繋がる根元さえ、問いただすことはなかった。


そのあとヒロはスウェットのまま「ちょっと電話してくる」と外に行った。


ヒロはとても通常どおりなのに、一晩中ヒロの腕の中にいた私は全然通常どおりにはなれていない。


今日ヒロの家を出ていく予定なのに……。

あんなに優しく抱きしめられたら、離れがたくなってしまう。


電話から戻ってきたヒロはソファーに寄りかかってテレビをつけはじめた。そのゆったりとした時間に私はかなり違和感。


「ヒロ今日バイトでしょ?」

シフトにはちゃんと出勤と書いてあるし、昨日も確認したから間違ってない。