いつの間にかカーテンの向こうが明るくなっていた。眠っていたのかそうじゃないのか曖昧な朝。
シトラスのような心地いい香りが鼻を通り抜ける。寝ぼけまなこのままふと顔を上げると……私の視線の先にはヒロがいた。
「わっ……!」
ビックリして起き上がると、「朝からうるせーな」とヒロがしかめっ面で目を擦る。
……ドクン、ドクン、ドクン。
なんでヒロが同じベッドに……?
だんだんと昨夜の記憶が繋がってきて、たしか私はまた悪夢にうなされてひどく取り乱した気がする。
それをヒロが気づいて、過呼吸になっていた私を……。
そっと唇に手を当ててみる。記憶は曖昧なのに、ヒロの柔らかな感触がはっきりと残っていた。
「ご、ごめん。私、その……」
意識が朦朧としていたから、昨日のヒロはもしかしたら幻かもと思っていたけれど、ヒロに抱きしめられた手の大きさも夢なんかじゃなかった。
「なんでお前が謝るんだよ」
ヒロは首を左右に鳴らしながら、むくっと起き上がる。
ヒロはきっと一晩中、私を抱きしめたままだった。
それで私も、ひどく子どものように胸にしがみついた。
そんな不安定な私にヒロは何度も名前を呼んで、過去に引っ張られそうになると、強く現実へと引き戻してくれた。
あんな安心感は、今まで感じたことがない。