前に自分で調べたことがある。

どうして古い傷痕がこんなにも騒ぐのか。

どうして今殴られてるみたいな痛みを感じるのか。


これは〝痛覚〟(つうかく)というものらしい。

痛みは身体じゃなくて、脳が覚えているんだって。だからいつまでも、いつまでも、あの男に与えられた痛みの感覚がそのままなんだ。



「ハア……ッ」


息ができないのに、私は死なない。

死んでしまうほど、苦しいのに私は生きてる。



「……サユ?」

そんな私の様子に気づいたヒロが目を覚ました。



「おい、どうした?大丈夫か……っ!?」


痛みと苦しさでうずくまる私をヒロが見ている。


イヤだ。見ないで。

こんな私に、ヒロだけは気づかないで……。



「サユ。ゆっくり息吸え。大丈夫だから」

過呼吸になっている私にヒロが優しく言う。



でも、吸えない。

酸素がどこにもない。

ここは水の中だっけ?