そして夜。私たちは同じタイミングで布団に入った。部屋の電気は消えて、今は天窓からの月明かりだけが私を照らしている。
「ねえ、ヒロ」
「んー?」
すでに寝る体勢になっているヒロに呼びかけた。
――『とりあえず明日までには戻ってこい。じゃなかったら警察に捜索願を出すから』
あの男の言葉を繰り返し思い出して、そのたびに思うのはヒロにこれ以上迷惑はかけられないってこと。
だって、警察が私を探しにきたら、家に置いてくれたヒロが事情を聞かれるかもしれない。
「なんだよ」
私がなにも言わないからヒロが続きの言葉を尋ねるように少しだけ身体を起こした。
「ううん。なんでもない」
……ヒロだけは巻き込みたくない。
明日になったらこの家を出ていこう。帰る場所も向かう場所もない私だけど、ヒロにはもう甘えられない。
ヒロにだけは、嫌われたくないから。