「ご、ごめん。私……っ」
慌てて拾おうとすると、尖った破片が私の指に刺さって「痛っ」と思わず声が出る。
「おい、俺がやるからお前は触るな」
ヒロがすぐに駆け寄ってきた。
「指切った?見せて」
「平気。このぐらい」
「いいから見せろ」
私はグイッと手を引っ張られて、ヒロは血が滲んでいる部分を確認するように見ている。
「痛いだろ。絆創膏貼るか?」
ヒロの何気ない優しさが今は必要以上に胸に沁みてくる。
ヒロは大袈裟だね。ガラスで少し切ったぐらいじゃ全然痛い内に入らないのに。
でも、こんな小さな傷でもヒロは心配してくれるんだね。
じゃあ、もし。
もしも、こんな傷よりももっと大きい傷が私にあったら?
絆創膏を貼っても隠せないほどの傷痕が私の身体中にあったら、ヒロはどんな顔をするだろう。
「本当に大丈夫だよ。それよりもコップごめんね。あとで同じやつ探して買ってくるから」
「いいよ。別に。って言ってもお前はしつこく気にするヤツだから今度の休みに一緒に買いに行けばいいよ。お前のぶんのコップも一緒に」
そう言ってヒロはニコリと笑った。