震える指先でスマホを耳から離してゆっくりと画面を確認した。そこには電話帳には登録されていない番号。

だけどイヤでも脳裏から離れないその11ケタの数字は私に恐怖心だけをよみがえらせる。


どこにいてもこの番号から電話がかかってくると3秒以内に出なければいけないルールがあった。

そんなの絶対にムリに決まってるのに、ルールを破るとしつけという名の罰が待っていて、ひとつずつ身体に傷痕が刻まれていく。



『せっかくお前の様子を見に来てやったのに、何日も帰ってこないなんて、ずいぶんばばあの家では甘やかされてたみたいだな』


ドクンドクンと、口から心臓が出そうなほど鼓動がうるさい。


私を痛め続けた〝男〟の声は、無条件にあの5年間の私を連れてくる。


『半年ぶりに会う親に挨拶もないなんて、そんな風に育てた覚えはねーんだけど』

スピーカー越しから聞こえる男の煙をはく男。タバコの匂いなんてするはずがないのに、まるで蛇のように煙が身体に巻きついてくる感覚。