『美幸さん超美人でしょ?俺なんて何回も告って振られてるからね』


なんとなくその姿が容易く想像できてしまった。

中学時代からヒロと友達なら美幸さんと会う機会も多かっただろうし、あんな美人を奏介くんが放っておくはずがないから。


「そういえば奏介くんの中学校の時の写真見ました。けっこうヤバかったです」

衝撃的すぎて、今でも頭に焼き付いてるぐらい。


『えーそれってヤバいくらいカッコいいって意味?』

「いや、そういうことじゃなくて……」

モゴモゴと口ごもると私の言いたいことを察したように『若気の至りだよ』と、奏介くんは言った。

そんな会話をしている内に電話の向こう側で奏介くんを呼ぶ声がして、どうやら休憩時間は終わりのようだ。


『じゃあ、近々遊びに行くからヒロにも伝えおいてね』

そう私に告げたあと、奏介くんは電話を切った。


奏介くんも今は他県のほうで仕事をしているらしくて、かなり忙しくしている。

ヒロいわく夏は稼ぎ時と言っていたけれど、ふたりが忙しいほど私はこんな風に家にいるだけでいいのかなって思ってしまう。

と、いってもヒロの家にずっと置いてもらうわけにもいかないし、私も私でこの先のことを考えなくちゃ……。


……その瞬間、まだ手の中にあったスマホが鳴った。


私は奏介くんがなにかいい忘れたんだと思い、画面もろくに確認しないで電話に出た。


「はい。どうしたんですか――」と、言葉が言い終わる前に聞こえてきた低い声。



『お前、なに逃げてんだよ』

ドクンッと心臓が大きく跳び跳ねた。